差別訴訟を防ぐ人事対策: 人事ファイル

「人事ファイル」とは?

前回のコラムでご説明した雇用ハンドブックに加え、重要な文書化の例として人事ファイルが挙げられます。各従業員にファイルを用意し、その中に雇用に関連する重要な書類を入れておきます。具体的には次のような書類を含みます:職務内容記述書 (job description)、従業員が応募時に提出したカバーレターや履歴書、成績証明書、”reference letter(s)”、企業側が “reference” を提供した人から情報を集めた際にとったメモ、採用通知、雇用契約書、雇用ハンドブックを従業員が受理し、内容を理解したことを証明する “acknowledgment form”、訓練に関する記録、給与や福利厚生に関連した書類、出欠記録、業務評価、昇進や昇給に関する書類、顧客や同僚などからのコメントを記したメモ、離職あるいは解雇に関する記録 (最終面接 “exit interview” でのメモなど)。最新の情報が反映されているように定期的にファイルの見直しを行いましょう。

留意すべき点は、米国障害者法 “Americans with Disabilities Act ” の決まりに従って、従業員の健康状態に関する資料(身体検査の結果など)は別のファイルに保存しなければならないということです。

訴訟の可能性を考慮した場合、あくまでも業務や能力に直接の関連がある書類に限定することが必要です。例えば、従業員の人種や性別などに関するコメントを含んだメモなどは除外するべきです。またプライバシー侵害のクレームを防ぐために、ファイルの保管場所にくれぐれも注意を払いましょう。 簡単にアクセスができないように鍵をかけたキャビネットなどを選びます。閲覧を許可されるのは、従業員本人と、正当な理由を持つ管理職 (昇進させるべきかどうかを考慮中のマネージャーなど)のみに限定します。

記録の取り方

従業員側から「不当な理由により昇進を拒否された」「解雇になった」といったクレームが出た場合、企業側としては「昇進拒否(あるいは解雇処分)を正当化するだけの理由があった」として該当従業員の業務成績を証明する書類の提出を余儀なくされることがあります。そういった可能性を考え、日頃から業務成績に関しては、詳細にわたって具体的な書き方をしておくことをお勧めします。「業務遂行に問題がある」「仕事の能率が悪い」「コミュニケーション能力が劣る」といった書き方は、あいまいなので避けた方が賢明でしょう。次のような書き方を一例としてご紹介します。

  「x月x日、社員Aにプロジェクト (内容を詳しく記述)を課し、x月x日までに終了するようにと言い渡し、本人の許可を取った (従業員の署名をとる)。」
  「期日のx月x日 になってもプロジェクトが終わらなかった。再度、Aと面談の機会を持って問題点(内容を詳しく記述)を話し合い、新たな期日 x月x日をもうけた (従業員の署名をとる)。」
  「プロジェクトが終了したのは延期した期日を2週間も延長したx月x日 だった。内容も言い渡したものとは違っていた。(内容を詳しく記述)。」

特に解雇処分となった場合には、必要とあれば第三者のコメントなども含めて念入りな記録を残しておくことが重要となります。いきなり解雇に至るというケースは少なく、警告や懲戒的処置などを経て段階的な経過をとることが一般的ですが、その経過を丁寧に文書化しておくことをお勧めします。

 

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