宗教を理由とした差別 (2): “Reasonable Accommodation”

アメリカ雇用平等法の厳しい一面という見方ができますが、場合によっては、差別行為をしないというだけでは不十分であり、従業員の個人的な必要性に応じて信仰や宗教的慣行に対する積極的な(affirmative)措置を講じることが義務づけられます。今回はこの “合理的措置”(reasonable accommodation)という概念をご紹介します。

具体的な例を挙げると、従業員がイスラム教徒であるということを理由に昇進を拒否したり、解雇したりするのが違法になるのは前回も説明した通りですが、差別のクレームを防ぐ上では、さらに一歩つっこんだ対応が必要となります。例えば、イスラム教徒の従業員が「職場でも一定の時間に祈りを捧げたい」という希望を示した場合には、企業側は妥当な範囲内で便宜を供与しなければなりません。それをせずに従業員の希望を聞き入れない場合は、”reasonable accommodation” の義務を怠ったとして訴えられる可能性があります。宗教を理由とした差別の訴訟を分析すると、”reasonable accommodation” をめぐるケースが数多くあります。

さらに、前回のコラムでご紹介した例(実際の判決によるもの)をもとに、”reasonable accommodation” を考えてみましょう。オーソドックスのユダヤ教徒が「金曜日の日没後は働くことができない」と申し出た場合、雇用者側は日没前に帰宅させることが可能であるか考慮する義務があります。カソリックの警察官が「中絶を行うクリニックの警備は自らの信仰に反する」と申し出た場合も同様で、その仕事には他の警察官を割りあてることができるかを考えなければなりません。また、宗教上の理由により従業員が一定の服装や髪型をすることもありますから、そういった慣行に柔軟に対応することも必要です。

ただし、”reasonable accommodation” とは文字通り “合理的” なものであればよいということです。何をもって合理的という決断を下すかはケース・バイ・ケースであり、個々の具体的な状況、特に業務内容に大きく左右されることになります。基本的なルールは、事業に “著しい困難”(undue hardship)を来たさない程度に、従業員の信仰や宗教的慣行に順応することが必要であるということです。例えば、人事再配備が不可能である場合、あるいは可能であってもコストが膨大であり事業に支障をもたらすといった場合には、順応できないとしてもやむを得ないという結果になります(しかし、「順応できない」と結論を早急に出すのではなく、最低限として「順応の可能性を考慮した」という努力を明示することが、訴訟を防ぐ上では必要です)。また、宗教的慣行として頭にターバンを巻く従業員に対し、経営者側が職場(工事現場など)での安全維持を理由に、ターバンを外してヘルメットを着用することを要求したとしても、違法にはならないでしょう。

訴訟を未然に防ぐ方法として不可欠なのは、一人一人の従業員と明確なコミュニケーションの機会を持ち、その経過を文書化して記録を残しておくことです。採用面接において応募者の宗教的背景に関する質問をすることは許されませんが、採用決定後は「企業側が知っておくべき信仰、あるいは宗教的慣行 (安息日や服装の規律、食べ物の制限など)はあるか」「そうであれば、従業員は企業に対して具体的にどのような対応を期待するか」(例えば、「日曜日には礼拝に出席するので週末出勤はできない」など)といった事柄について具体的に文章にし、提出することを課すべきです。 それに対して企業側は、「どのような形で便宜を供与するか」「供与すると事業上にどのような困難が生じるか」といったことを考慮した上で適切な対応をとり、従業員の同意を得る(あるいは同意ができない場合は、その理由をさらに文書化させる)といったプロセスを導入すべきです。

ご参考までに、”reasonable accommodation” の概念はタイトル・セブンのみではなく、障害者差別禁止法 (Americans with Disabilities Act)においても適用されることをつけ加えておきます(詳細は後のコラムに譲ります)。

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